第5章 死んだらキミに恋をする【一松】
「はい、もう1回……」
鬼の着ぐるみを着たおれは、トド松の乳首を勢いよく引きちぎった。
「あーーーー!!」
トド松の叫びが地獄にこだまする。
おれはニヤリと笑うと、同じ言葉を繰り返した。
「はぁい……もう1回……」
すぐに生えてきた乳首をまたちぎろうとする。
「えっ!? もしかして、一松兄さん!? いや、なんでそっち側なの?」
トド松がおれの顔を見て声を上げた。
やっと気づいたか。そうだよ、乳首をちぎっていたのは、ゴミでクズなお前の兄貴だったんだよ……。
「なんでだろうね……気づいたら乳首をちぎる係になっていた……」
ヒヒヒッと笑ってみせると、トド松は顔を歪ませた。
「何それ! こわっ!」
「はぁい、そんなことより、ちぎりまーす……」
おれは、容赦なくトド松の乳首に手を伸ばす。
「はぁっ!? いや、ちょっと、待って! 色々ワケわかんないから! ホント待っ……あーーーー!!!!」
ここは地獄に堕ちた死者が乳首をちぎられる場所。乳首は何度でも生えてくるから何回でもこの痛みを味わうことになる。
おれは鬼ではないが、いつの間にか乳首をちぎる仕事をやらされていた。
「はーい……次の人……」
ヒヒヒと笑いながら、順番待ちをしている死者を呼ぶ。今日は一体何人の乳首をちぎることになるのか。
虐めたり虐められたりするのが好きなおれには、なかなかどうして、この仕事は合っている。ニートのおれが、まさか死んでから天職を見つけるとは……。