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THE WORST NURSERY TALE

第1章 【01】プロローグ


 氷雨は、腕時計で時間を確認してからペンライトの明かりを消した。任務実行まで、あと10分といったところか。ペンライトと地図を懐にしまって、深呼吸をひとつ。


「んじゃ、時間だし配置につこうか」

「ストップ」


 既に動きだそうとしていた他の者達を止めたのは、ベルフェゴールの声である。
 はて、お気に召さないことでもあったろうか。なんて思いながら、氷雨はきょとんとして首を傾げた。彼女の瞳に映るベルフェゴールの顔は暗闇に滲んでいて、上手く表情を読み取ることができない。


「どうかした?」

「オレと氷雨の配置、逆ってことで」

「へ?いいの?」

「不意打ちとか、つまんねーから。別に囮役が全部やっちゃってもいいんだろ?」

「あぁ…まあ、それは自由にどうぞ…」

「うしし、じゃ、そーゆーことで」


 ベルフェゴールの意図を察したのか、若干残念そうな顔になりながらも氷雨は彼の提案に頷く。元々、役割を選んでいいと言ったのだから拒否権などあるはずもなかった。
 彼女の返答を聞くなりベルフェゴールはさっさと持ち場へ向かってしまい、その姿は数秒の間も置かず見えなくなる。残された氷雨が「君らも行っていいよ」と隊員たちに声をかければ、他の者達も持ち場に向かう。


「今のは、優しさ……かな?」


 ぽつりと呟いた問いの答えを知る者は、ここにいない。やれやれとため息を吐きながら、氷雨も自分の持ち場へ向かった。




あるところに二人の暗殺者がいました

(うえ、本当にやっちゃったよ!)
(あったりまえじゃん。王子ナメんな)
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