第3章 【き】きっと終わってしまう恋だから
その後駆け付けたヒーローと警察によりひったくり犯は逮捕された。そして、無謀にもひったくり犯に果敢に挑み飛び出した勝己は警察とヒーローからお咎めをくらうこととなった。そして私は当事者と言う事で、勝己をその場に残し、そのまま警察署へ向かう事に。折角勝己の誕生日だったのに、とんでもない誕生日にしてしまった。
書類の提出を終える頃にはすっかり日も沈んでいて、重たい足取りで帰路に着くと、家の前に人影があった。
「勝己…!」
「遅せえ!」
いつから家の前で待っていたのか、勝己は私の姿を見るなり怒鳴り声を上げた。
「折角の誕生日だったのにごめんね。てか、お誕生日おめでとう!」
勝己と一緒に何処に行こうとか、なんか色々考えてたのに、勝己と出掛ける事も出来ず、プレゼントも渡せず、取って付けたようなお祝いの言葉。ホント、ダメダメだ。
「手。」
「え?」
舌打ちをすると、私の右手を勝己は掴んだ。
「火傷になってんじゃねえかよ!もっと気を付けろや!」
ひったくり犯を取り押さえていた際に出来た火傷。右手の掌は赤くなり、大きな水泡が幾つも出来ていた。
「この位大丈夫だよ。」
痛い事に変わりはないけど、この位の怪我ならすぐに治る。怪我をしたのが咄嗟にひったくり犯を取り押さえてくれた勝己じゃなくて良かった。
「とっととこんな仕事やめろ!テメェには合わねえんだよ!」
「嫌だよ!私の生き甲斐だもん!」
そう言うと、納得いかないといった顔をするものの、それ以上勝己は何も言わなかった。