第2章 prolog
「…いや、くよくよしてても仕方ない!平民でも恋はできるし仕事もできる!もしかしたら平民から王子と結婚できるかもしれない!玉の輿!目指せシンデレラストーリー!」
なんてぺちゃくちゃと独り言を繰り返す。
これをもし人に見られたら完全に変人だろな…。
そんなことを考えている間に、我が家へと辿り着く。
住宅街の中に佇む、良くいえば昔懐かしい、悪くいえば古いアパート。しかしすぐに部屋には入らず、私はホースを手に取り庭の方へと向かった。
こんな荒んだ私にも、最近見つけた癒しがあるのだ。
それは愛しいお花ちゃんたちの水やり!
数週間前、うちのアパートの隣の平屋のお花が枯れかけているのを見つけてからずっとお世話をしている。
といっても流石に庭に入るのは不法侵入になるので脚立を使って塀の上からホースで水をかける雑水やりだけど。
「お花ちゃんたち〜、お水だよ〜」
数日雨が降っていなかったせいで元気がなかったお花たちも、今では綺麗な花を咲かせている。
「でもこんなに丁寧に植えられてるのに水やりしないなんて変わってるなぁ」
ここの花たちは自然に生えたものではなく、明らかに人の手によって植えられ整えられていた。
色とりどりの花たちがお互いを尊重するかのように綺麗に咲き誇り、この庭だけまるでお金持ちの庭園のような雰囲気を醸し出している。
特に私のお気に入りは淡い青色の小さな花だ。
見ただけじゃ名前までは分からないけれど、初めて見た時からこの子に惹かれていた。
それだけ素敵な庭なのに何故か世話をする人の姿は見受けられないのだ。
「引っ越しちゃったのかな。もし空き家なら私がお世話したいなぁ…雑草とか生えっぱなしだし」
そう思いながら私は初めてこの家の入り口に目を移す。そこに表札などはなく、人が住んでるかも分からない状態だった。
…明日、人の気配がなかったら雑草抜きに言っちゃおうかな。
そう思いながら私は自分の住む部屋へと向かうのだった。
この考えが自分の人生を大きく左右することになるなんて、考えもせずに。
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