第27章 蜂蜜レモネード7(及川end)
『取引』から解放されたは、静かに教室に佇んだ。
俺は、それを振り返りもせず、そのまま後にした。
は影山を選んだ。
それは紛れもなく、自分自身にナイフとして突き刺さる。
ただ、家に帰れば彼女がいる。
それを避けたくて、なるべく夜遅くに帰宅し、顔を合わせないように生活した。
失って初めて気付くことは沢山あった。
そして、『取引』でしか彼女を繋ぎ止めることが出来なかった自分が本当に憎くてたまらない。
もっといい方法もあったんじゃないか。
普通に好きだと伝えれば、いつものように、他の娘のように、繋がっていられたのではないか。
だが、その考えはすぐに否定できる。
自分は初めてその時、『に拒絶』されることを怖がった。
それは、極めて明白な事実だ。
だから、今もこうして逃げてしまうのは、彼女の口から実際に、『嫌だった』と聞くことを恐怖しているからだ。
「なっさけな…!」
悲しくも時間潰しに入った漫喫の個室に、自分の声が響いた。