第1章 第一話
すると、彼の周りに幾つかの氷柱が現れた。その先端は、鋭く尖っている。
そして氷柱はすぐに勢い良く彼女を足止めしようと降り注ぐ。
「げっ!魔法使いやがったな!!」
「お前が逃げるからだろうがよ!」
「こうなったら、仕方ない…!
……瞬歩!!」
途端、彼女はヒュッという風を切るような音と共に、消えた。
「なっ、あいつ、また妙なのを遣いやがったな?!」
氷柱を撃つのをやめ、あたりを見回しつつ言う。
昨日も、一昨日も、その前も、またまたその前も、同じように逃げられていたのだった。
「マゴイも使ってるようには見えなかったし、どうなってんだありゃ…?!」
そう言いつつ顔をしかめていると、一人の女性がジュダルに近づいてきて、声をかけた。
「どうしたのぉ、ジュダルちゃん?また魔法ぶっ放しているの見かけたんだけどぉ?」
神官であるジュダルをちゃんづけで呼ぶ、この女性は、煌帝国の第八王女、練紅玉だった。
「あ?…なんだよ、ババアかよ」
「バ……?!……コホン、とにかく…、この様子だと、またエルアちゃんねぇ?」
因みに、紅玉はジュダルからババアなどと呼ばれているが、年は17歳。対してジュダルは18なので、彼のほうが年上なのだが…
「またとはどーゆーことだババア」