【千銃士】笑わないマスターとfleur-de-lis.
第5章 On ne vit que deux fois.
「ねー、ベスくん。今日寒くない?」
服に包まれた肩をさすりながら言えば、ちびちびとスープを飲んでいたベスくんが呆れ顔になる。
――あの翌日、ベスくんは大丈夫か心配だったけど朝の食堂に普通に彼は現れた。
スフィーはケンタッキーと午前の訓練が始まる前にフットサル?をするとか言ってちょっぱやでご飯を搔き込み出て行ってしまった。
タバティエールは普通に炊事当番をしているし、シャスポーはドライゼに声を掛けられツンケンした声で話している。
カールはレオポルトやエカチェリーナ達と食後のお茶が不味いと嘆いているし、ニコラとノエルはナポレオンにキャッキャと昨日の大立ち回りの話をしていた。
みんな――いつもと変わらない。
「訓練が足らん。後脂肪だ。そんなもやしみたいな体をしているから寒いんだ」
『心頭滅却すれば火もまた涼し』だ、とベスくん。そんな根性論やだよ。
「寒い」
貰ってきたスープを寒くて皿を持って飲む。
今日も朝ご飯は硬いパンとスープにおかわり自由のマッシュポテト。
芋は不味くないけどそんなにいっぱい食べられない。
スープに芋を溶かしながらすする。
「もっと食べろ」
「やだよー。俺は今のでベストスタイル」
俺は結構なマイナーチェンジを繰り返し、大分口径が広くなった事もあるけど、今は折角こんなスマートな姿で顕現したんだ。太りたくない。