第12章 彩雲
【翔】
ほんとはさ、今まで照れ臭かったんだ
後輩に『これ、これの彼女』なんて紹介するの……
男くさい、男ばかりの中で青春時代を過ごし、
男同士の中では、素の自分を曝け出せたけど。
女の子の前だと、ちょっとカッコつけちゃう癖があって。
その癖が結構面倒くさいわけで…
だから、『兄貴』なんて慕ってくれる後輩たちの前では、そういう自分を見せるのに、抵抗があった
仕事柄、彼女が出来ても、公の場に連れて行くことが難しい立場上、今までは隠すことが当たり前になっていたから…
智くんとのことも、正直なところ、メンバー以外の誰かに話す気もなかった
だけど……
『そんな訳ない』
そう否定した時…
上手く言えないけど、胸の奥の、そのまた奥のところで、キュウ~ッと苦しくなったんだ
こんな気持ちは初めてで…
気が付いたら、上田に、智くんと付き合ってるって打ち明けてた
当然上田は驚いてたけどね
智くんは、少し嬉しそうだった
多分だけどね…
「しょ〜おくんっ♥️」
洗面所で歯磨きしていると、急にやって来て、俺の後ろから肩にのし掛かってきた智くん
「ちょっ///なんだよ、急に〜」
分かってるけど、敢えて惚けてみると、
「上田、ビックリしてたね〜♪」
って、含み笑い気味で耳元で囁いてきた
鏡越しに、そんな智くんを見ながら、
俺は歯磨きを続けた
「……あのさ、俺、嬉しかったの!」
「嬉しかったって、なにが?」
照れくささも手伝って、まだしらばっくれる俺に、智くんは、
「俺と付き合ってるって…言ってくれたこと……ありがとね、翔ちゃん」
さとしくん……
「嬉しかったんだよ、そんなこと、上田に話すなんて、思ってなかったからさ…」
そう言って睫毛を伏せ、俺の首筋に唇を押し付けてきた智くんの腕を引き、胸の中に引き摺り込んだ
「しょお、くん?」
何て言うかもう、
この破壊力半端ないキュートさ、
勘弁してくれよ…
俺は大急ぎで口をすすいだ
まあ、焦ることもないけどさ♪