第12章 彩雲
【智】
「おつかれ、リーダー」
いつものレギュラー番組の収録が終わり、一番乗りで楽屋へ戻ってくると。
次に戻ってきたのは、松潤だった。
「おつかれ~」
「今日はずいぶんお疲れだったじゃん。どうしたの?」
椅子に体を投げ出すように座った俺の隣に腰掛け、ちょっと揶揄うような視線を投げてくる。
「そ~お?いつもと変わんないけど?」
「…昨日、夜中までハッスルしたんじゃないの?」
すっとぼけてみたけど、松潤はますます面白そうに目を細めた。
「そ…んなこと、ないわ!」
「へぇ~…ま、そういうことにしといてあげても、いいけど~?」
言いながら、ぐっと顔が近付いてきて。
「ふにゃっ…!」
不意打ちで、お尻をするっと撫でられて。
思わず変な声が出ちゃった!
「ふふっ…相変わらず、感度いいのな?」
「ちょっ!やめろっ!」
「はいはい。これ以上はやらないよ。翔くんに怒られるしね」
楽しげに笑いながら、すっと離れていく。
潤と別れて
翔くんと付き合い出してから半年
最初はなんとなくギクシャクもしたけど
仕事で否が応でも顔を合わせるうちに
ゆっくりだけど潤の傷は癒されていったようで
今では前みたいに
…いや、付き合ってるときはみんなの前では素っ気なかったから…
今まで以上に
俺にちょっかい出してくる
最初は潤に対して申し訳ないって気持ちが大きかったけど
屈託のない少年みたいな顔で笑う潤を見てると
最近では大型犬が戯れてきてるみたいで可愛いなって
すごく穏やかな気持ちでそう思うんだけど
翔くんはそうじゃないらしく…
「…なにしてんの?」
地を這うような、低~い声がして。
いつの間にかドアのとこに立ってた翔くんが、じろりと俺を睨んできた。
「別に~?なにもしてないよ?」
松潤は白旗を挙げるみたいに、両手を上にあげる。
「ね?リーダー」
「う、うん」
「ふ~ん…」
慌てて頷くと。
翔くんは険しい顔のまま、つかつかと靴音を響かせながら近付いてきて。
「帰るよ、智くん」
強い力で俺の手首を掴むと、引き摺るようにして楽屋を出た。
「ちょっとっ…」
「リーダー、おつかれ~」
ニノと相葉ちゃんが、笑いながら見送ってくれた。