第11章 朝暉
【智】
翔くんのバカ…
「え?なに?どうしたの!?」
両手を突き出した俺を、翔くんがビックリした顔で見た。
「もうっ!早くギュッてして!」
「わ、わかったよっ…」
少し強めの声でもう一度言うと、慌てて抱き寄せてくれる。
翔くんの熱い肌がピタッとくっついて。
規則正しい鼓動の音が聞こえてきて。
俺は細く息を吐き出した。
ダメだなぁ、俺…
途中まではさ
翔くんのドSな攻めにドキドキしつつもワクワクしてたんだけど
途中からなんだか不安になってきて
なんっつーか…
遊ばれてる気分っての…?
翔くんが俺のこと好きって言ってくれるの
信じてるけど
でも
ここまで来るのに本当にいろいろあったから
なんか怖くなっちゃったんだ
本当に翔くん
俺のこと好きなんかなって…
思わず、ぎゅうって翔くんの背中を抱き締めた。
「…智くん…ちょっと苦しいよ…」
「…ごめん…」
そう言われたけど、腕を緩められないでいると。
翔くんの大きな手がゆっくりゆっくり背中を擦ってくれる。
「…俺の方こそ、ごめんな。ちょっとやり過ぎたよな」
「ううん…そんなことない…」
翔くんは悪くないもん
俺が勝手に不安になっちゃっただけだもん
翔くんは俺の頭をポンポンと軽く叩くと、少しだけ体を離した。
覗き込んできた瞳の奥には、優しい光が輝いてる。
そうして。
「好きだよ、智くん」
俺が今、一番欲しかった言葉をくれた。
「え…翔くん、なんで…?」
なんで俺の考えてることわかったの…?
「ふふ…わかるよ。何年一緒にいると思ってんの」
「…翔くん…」
「ごめんね?智くんが可愛くって、ついついイジめたくなっちゃった」
「可愛くないもん!」
「可愛い♡」
「可愛くないっ!」
「そういうとこが、めちゃくちゃ可愛い!」
最後は、なんだかわかんない言い合いになって。
「ぶーっ!なに言い合ってんの、俺ら」
「ホント、バカだー」
素っ裸で抱き合ったまま。
2人で笑い転げた。