第9章 暁
「…ごめん…」
どれくらいそうしていたのか…。
ようやく落ち着いた松潤が、ゆっくりと離れていった。
「…もう、大丈夫だから…相葉くん、帰っていいよ…」
泣きすぎて真っ赤な目と、パンパンに腫れてしまった顔でそう言われても、出来るわけない。
「今日は泊まってく」
「でも…」
「もう、決めたの!ほら!とりあえず寝よ!明日も仕事だろ~!?」
俺は強引に、彼をベッドに連れて行った。
「ちょっと待っててね?」
ベッドに横にならせて、急いで洗面所にタオルを取りに行く。
あの腫れた顔じゃ、明日の仕事に差し障るだろうから、冷たいタオルで冷やした方がいいと思ったからだ。
水で濡らして、それを持ってベッドへ戻ると、不安そうに瞳を揺らして待ってた。
「これ、目元に当ててて?ちょっとはマシになるだろうから」
「うん…ごめん…ありがとう」
素直にお礼を言うと、俺に為されるがまま、そのタオルを目の上に置く。
その頼りない姿を見てると、一人に出来ないって気持ちが大きくなって。
「…ねぇ、俺もこのベッドに寝ても良い?」
つい、そう聞いてしまった。
「ええっ…!?」
びっくりして、起き上がろうとする松潤を押さえつけて、その横に潜り込む。
弾みで、松潤を抱き締める形になってしまった。
「ちょっと…なにやってんの…!」
「いいからっ!」
逃れようと暴れる体を、ぎゅうっと強く腕の中に囲い込む。
「いいから…今日は、こうやって寝させて…?」
なるべく優しく響くように、そう声を出すと。
ビクンと震えて、そのまま大人しくなった。
「…夜中、蹴らないでよね…」
「翔ちゃんじゃあるまいし…そんな寝相悪くないもん!」
ちょっと怒った声を出すと、小さく笑って。
おずおずと、背中に腕が回ってきた。
「…あったかい…」
松潤の呟きが、暗闇に溶けた。