第7章 湖月
「からだ、大丈夫?」
潤の手が、俺の髪を優しく梳く。
返事をしようとして口を開いたけれど、カラカラに渇いた喉から漏れたのは、息だけだった。
「待ってて。水、持ってきてあげる」
優しい笑みを浮かべて俺の頬にキスをすると、潤は部屋を出ていく。
指1本動かすのも億劫なほど怠くて。
顔だけをなんとか動かして窓を見ると、開け放したカーテンの向こうはもう暗かった。
今、何時だろう…
俺たち、何時間セックスしてたのかな…?
「お待たせ」
ぼんやりしていると、潤がペットボトルを手に戻ってきて。
俺の体を抱き起こし、ペットボトルの水を自分の口に含むと、俺の唇に自分のを押し当てた。
少し温い水が一気に咥内へと流れ込む。
「んっ…ぐ…」
噎せそうになりながらも、なんとか飲み干すと。
張り付いて苦しかった喉が、少し楽になった。
「もっと飲む?」
「…ん…」
潤はまた水を自分の口に含んで。
口移しで、ペットボトルの半分くらいの水を飲み干した。
「ねぇ…今日の智、すっごく可愛かった」
俺の体を強く抱き締めて、何度も髪を撫でてくる。
「ほら、見て?こんなに可愛いの」
手を止めて、枕元に放り出した携帯の画面を俺の方に向けると、そこには。
繋がってる
俺と潤の姿
いつの間に…!?
「やっ…消してっ…!」
奪おうとしたけど、体は思い通りに動かなくて。
「ダ~メ。智が俺のこと愛してるって、大事な証拠だからね」
ひらりとベッドから降りて、画面を愛おしそうに撫でる潤の姿に。
背筋が凍る気がした
「ふふ…いっぱい撮ったから、後で送ってあげるね?」
「やめて…」
「ああ、そうだ。翔くんにも…」
「やめてって…!」
動かない体を無理やり起こそうとしたとき。
インターフォンの音が、空間を切り裂いた。