第7章 湖月
【翔】
雅紀はニノのところに戻っていった。
というか、元々ニノの隣にずっといたのに、
そこに俺が割り込んだんだ。
………羨ましかった、というのとは違う。
雅紀が……
欲しかった……
ニノのものなんだ、と思えば思うほど、
もう雅紀しか要らないとさえ思えた……
しかも、ソッチの経験がなかったってことも、
俺が執着した一つの要因で…
ニノとセックスしても、受けに回ったことはなかったって知って…
増々雅紀を手に入れたくなったのかもしれない…
熱病…に罹っていたのかもな……
そうじゃなきゃ、ありえないよ、
メンバーの恋人のメンバーに、
横恋慕するなんて///
いつか、ニノと心の底から
笑って話せる日が来たら、
『あの時はごめんね』
って、そう言おう…
ごめんねじゃないよ~
…そうニノが笑ってくれる、そんな気がするから。
マネに送ってもらい、俺はいつものスーパーに寄った。この時間になると、刺身が半額になってるんだ。
「買い物したら、直ぐ帰るからもういいよ」
「でも…」
心配顔のマネに、ニッコリ笑って車を降りた。
実際、ここから裏道を通れば5分くらいでマンションだし、待たせるのも気が引けるからね。
俺はビールと酒のあてに『半額』と赤いシールが張られた貝の刺身と焼きそばを買った。
これが今日の夕飯だ。
36歳…可哀想だと言わないでくれよ?
これでも俺にとっては至福の時間なんだから…
いつからか、ひとりで帰る日はこれが日課になっていた。
その日の気分でアルコールとつまみを少し買って、家で誰にも邪魔されずに、ゆっくり飲む…
疲れを取るには最高なんだ。
まあ、待っていてくれる人がいれば、
それに越したことはないんだけどね…
汚い手を使って彼女と別れた俺…
暫くは反省して一人でいるっていうのも、
悪くないのかも…
……だけど……