第4章 天泣
目を開くと、心配そうに覗き込む瞳。
「…大丈夫…?」
答えようと口を開いて。
「…だい…じょ…ぶ…」
押し出した声は、掠れていた。
あの後も、ニノは俺を離してくれなくて。
何度も何度も、貫かれて…
最後はどうなったのか、覚えていない。
でも、体に不快感はないから、ニノがキレイにしてくれたんだろう。
下着も、履いてるし…
「…ごめん…やり過ぎたね…」
おずおずと伸ばしてきた手が、俺に触れる寸前で止まる。
「…ごめんね…雅紀…」
語尾が小さく震える。
止まった手が、そのまま拳を作って。
俺に触れることなく、離れていった。
引き留めたかった。
触れて欲しかった。
でも、俺にはそんな権利はもうない。
ただ黙って、ニノが俺の罪を裁くのを待つしか…
怖くて、逃げ出したくて。
でも、逃げちゃダメだって自分に言い聞かせて。
俺は彼の目を見つめながら、判決の時を待つ。
ニノは揺れる瞳で俺を見つめ、何度も深呼吸をして。
やがて、大きな溜め息を吐いた。
「…無理、だよ…」
言葉が鋭い刃となって、突き刺った。
「ごめん…俺…」
切り裂かれた心臓から、ドクドクと鮮血が溢れ出す。
でも、それでも。
受け容れなきゃ…
自分で、招いたことなんだから……
そう言い聞かせても、痛みは全身に広がって。
俺を突き崩していく………
堪えきれなかった涙が、零れる。
滲んでいく視界の中。
ニノが、微笑んだ。
「…おまえと別れるなんて、無理」