第6章 待宵月
『わさびおいで』
この子は小鹿のわさび、怪我をしている所を家康が助けたらしい
最初は"非常食"と言っていたが一目で嘘だとわかった
エサを持って呼ぶとちょこちょこ寄ってくる
葉月の手からエサをモグモグと食べる
「葉月」
『家康お帰りなさい』
「ちょっと部屋に来て」
『わかった』
残りのエサを鈴に渡し
嬉しそうにすり寄るわさびの頭を
一撫でして家康の部屋に向かった
『今日も秀吉さんのところに行ってたの?』
信長の暇潰しに付き合わされた日から数日がたった
家康は最近よく秀吉の御殿に行っていた
「これ桜花から預かった」
『桜花から?』
文と団子を受け取り小首を傾げる
団子を近くの文机に置き文を広げる
""葉月様
拝啓、暑い日が続いていますがいかがお過ごしですか?
なぁ~んて書いてみたけど元気だよね!!
葉月のお陰で秀吉さんともすっっごく仲良くしてるよ🎵
もぉ~戦国ライフをエンジョイしてるの~♥️
はあ!思わずのろけちゃった....ごめんね🎵
ええっとね、実は葉月にお願いしたいことがあるの
着物じゃなくて服を作ろうと思ってます!
葉月には服のモデルになってほしいの
今度サイズをはかりに行くからよろしくね🎵
貴女の幼馴染み桜花より♥️""
『......』
読み終わると無言で文を片付けた
「なに?」
『ただの惚気の文
それよりお茶入れるから一緒にお団子食べよ』
「甘い物は好きじゃないから葉月が食べて
お茶だけもらうよ
葉月、文見てもいい?」
どうぞと言うと早速開いたが眉間に皺を寄せた
「読めないんだけど」
現代の文字で書かれた文は家康には読めなかった