第5章 十三夜月
「葉月ー!!」
翌日の朝早くに桜花が泣きそうな顔をして家康の御殿に走りこんできた
『おはよう桜花、朝から元気ね』
「煩いんだけど静かにしなよ」
「聞いてよ~信長様が...」
話始めた桜花だったがぐ~と大きな音を出し顔を真っ赤にした
「桜花様もお召し上がりになりますか?」
『仕方ないわね鈴もう一膳お願い』
朝餉の準備をしていた鈴はかしこまりましたと
一度さがると直ぐに食事が運ばれてきた
「それで、昨日、天守に、行ったら」
「食べるかしゃべるかどっちかにしなよ」
「.....」
『食べるのね』
もぐもぐと頬張りお茶を飲み干し一息ついてからようやく桜花はしゃべりだした
「ふぅ~よし!
大変なの!?信長様がね会えって言うの!?」
『会え?誰に?』
「え~と...あれ?なんて言う名前だっけ?」
『桜花ちゃん
まさか本気で言ってるんじゃないわよね?』
「まままさか!?そんなわけないです!!」
だらだら冷や汗を流しながら必死に思い出す
「あっ!そうそう!!
浅井長政か前田利家!?もしくはその両方にっ!!?」
『...ねえ家康』
「なに?」
『信長様の妹君、お市様はご健在?』
「お市?さあ知らない」
『(お市様はいないのかしら?)桜花、会うなら前田利家にしなさい
あなたは信長様の妹ではないけれど
万が一のことがあっては大変だから』
「万が一って?」
『桜花は歴史知らないの?
信長様の妹君のお市様は浅井に嫁ぐのよ
桜花を気に入ることは無いとは思うけれど
万が一にも間違って気に入られでもしたらほんとに嫁ぐことになるわよ』
「えっと....葉月は心配してくれてるの?
それともバカにしてる?」
『あら、それは勿論...』
「『バカにしてる』」
「葉月も家康も酷い!?」
『あらあら、冗談よ桜花』
頬を膨らませ怒る桜花の頭を優しく撫でた