第9章 立待月
「謙信様、信玄様
ようこそおいで下さいました」
信玄は慰問するため謙信を引き連れ北条城を訪れていた
「夜盗は早々に殲滅した」
「ありがとうございました
これで娘も報われます」
座ることもせずに開口一番に謙信は北条に告げた
北条は淡々とお礼を述べ謙信たちをもてなし始めた
「謙信、俺は先に失礼する」
謙信に断りを入れ部屋を出ていくと
目指すは北条の正妻、葵の母の元へ向かった
「いらっしゃいませ信玄様」
「やあ、君の大事な宝物の姫君に
春が訪れたようだよ」
「そうですか.....
葵はちゃんと好いた相手のもとへ
たどり着けたのですね」
「ああ、心配いらない
大翔が幸せにしてくれる」
「信玄様...葵を
娘をよろしくお願いいたします」
涙を流しながら深々と頭を下げた
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「謙信様、葵と申します
これからよろしくお願いいたします」
「....知っていると思うが
春日山城は女人禁制だ」
「昨日までだがな」
「黙れ信玄、余計なことを言うな斬るぞ」
横からちゃちゃを入れる信玄をぎろりと睨みつけた
「この城にいることを許してやる」
「ありがとうございます謙信様」
「では、俺が造った新居に案内します
ついて来て下さい」
「はあ!お前
いつそんなもん造ったんだよ!?」
「企業秘密です」
「必要以上にうろつくな」
そう言って謙信はさっさと出て行ってしまった
「謙信の許可を得られた良かったな~」
「そうですね」
「あの...どういうことでしょうか?」
「城の中を自由に歩いていいと言うことだよ」
「謙信は捻くれてるからな~」
さあ行きましょうかと佐助に案内され
これから二人で過ごす離れへと向かった
「大翔様
不束者ですがよろしくお願いいたします」
いつも山裾で俺を待っていた葵
これからはここで俺の帰りを待ってくれる
新たな一歩をここから始めよう
俺は君を照らす月になる