第8章 S&N
S side
あの日、ちょっと早く終わった仕事帰りに、俺は無性に甘い物が食べたくなって
だからといって実家の物は食べたくなかった
どこか違うところでも良かったんだけど、ちょうど今朝、親と口論していたこともあって、わざわざライバル店に行ったんだ
ずっと行くなと言われていたことへの反発でもあったかもしれない
でも、あれだけ争っている店がどんなものか興味があったことも確かで
一度も行ったことはないから顔は知られてないだろうと行ってみた
入ってみると、そこには親父さんはいなくてあいつしかいなかった
「いらっしゃいませ」
すごく可愛い笑顔で迎えられた
今思えばきっとその瞬間に恋に落ちていたのだろう