第7章 S&O
「櫻井、お前、智に邪な想いを抱いているらしいな」
「っ!だんな樣?!けしてそのようなことは……」
「使用人どもの間で専らの噂らしいじゃないか」
「噂でございます、真実ではございません!」
「何でも寝室の中まで入り込んでいるんだと?」
「申し付けられたお品物をお届けに上がっただけでございます」
「火のないところに煙はたたぬと言うじゃないか。疑わしいことがあったのだろう」
「ありません!」
「何か間違いが起こったら困るからな。お前は今日中に荷物をまとめて出ていきなさい」
「そんな……!だんな樣、わたくしをお信じください!」
「智は大事な跡継ぎなんだ。何か起きてからでは遅い。我家の家名に傷がつくことは防がなくてはならない」
「だんな樣……!」
「さっさと出ていけ。今後この家には近づくな」
「智さま……ずっとお慕い申し上げておりました」
「けれど本当に何もなかったのです」
「おそれ多くて、汚してしまいそうで」
「身分違いは重々承知しておりますが、あなたへの恋心は抑えることができませんでした」
「それでもこの想いは自分の胸1つにおさめ、誰にももらしはしなかったはず」
「もちろんあなたさまにも気取られぬように」
「ただあなたにお仕えするだけで幸せだったのです」
「わたくしの一生をかけてお守り致す所存でしたのに、それも叶わぬこととなってしまいました」
「智さま……愛しております、誰よりも……」
「どうかお幸せに……」
End