第7章 私の王子様
シルクside___
「───ゔぁああっ!!」
全部無茶苦茶にしてやりたかった。
俺の心臓が破裂してこのもどかしさがどろどろと抜けていってくれればよかったのに。
俺は蹲って、肩で呼吸をする。
髪をぶちっと切れるほど引っ張っても痛みは感じなかった。爪が頭皮に食い込んだ。
自分の不甲斐なさに何度も何度も後悔したのに。
結局二の舞どころじゃ済まなくなってるじゃねえか。
「クソッ…!!」
地面を拳で叩きつける。恋奈が感じた痛みに比べりゃ、こんなの痛くなんかねぇよ。
俺は立ち上がって、あーだこーだ考える前に体は動いたはずだった。
「どこ行く気?」
「……モト、キ」
出口を塞ぐように モトキ、ンダホ、ぺけが立ち塞がっていた。
怒りを込めたような目でジッと俺を見据える。
その目に俺は少し恐怖を覚えたが、すぐに怒りを取り戻した。
一刻も早くアイツらに会わなきゃならねえってのに、こいつらは邪魔する気かよ。
「…恋奈が誰かに誘拐された。だから俺は、ソアとイズカに会ってあいつらから事情を聴かなきゃいけねぇ。
これで分かったろ?一刻を争う状況をお前らは邪魔するってのかよ」
早口でまくし立てたのは恋奈がいなくなったという事からの焦りか、それとも自分の不甲斐なさをモトキ達に知られたくなかったからか、言った俺でも分からなかった。
モトキは俺の言葉を聞いてから溜息を一つ落として、
「俺らも協力するに決まってんだろ」
そう言う。
彼の目は血走っていた。
「ソアとイズカの部屋にGo Goー!」
「呑気だね、ダホ…」
後ろで呆れるような言葉が飛び交う。
でも、俺らの決意は本物だった。
「……やってやろうじゃねぇの」
つい口角を上げてしまった俺も、決意をした一人だ。
恋奈───〝元〟生贄のプリンセス。
どうか俺を信じて待っていてほしい。
必ず、迎えに行くから。