第4章 いる
「__真ん中に寄ってくださーい!」
イズカちゃんが私達にカメラを構えながら、そう言う。
私達はその指示通りに動いて、少し真ん中に寄った。
私の両隣にはシルクとモトキがいて、後ろの段にはぺけとンダホ。
私は真ん中なんて遠慮したけど、〝姫の歓迎会なんだから〟とモトキに念を押されて結局真ん中になってしまった。
何だか、少し恥ずかしい。
その反面、胸を張っていられるような自分に嬉しさを感じた。
肩身は決して狭くない。
彼らがいるからこそ、私はここで姫として生きていられる。
そんな状況が嬉しかった。
「じゃ、俺らはアデューの手で!」
シルクが皆にそう言う。
私が頭上にクエスチョンマークを浮かべていると、隣にいたモトキが優しく教えてくれた。
モトキによると、ピースの間の隙間をなくして ぎゅっと凝縮させたものを斜め上の角度から、〝アデュー!〟と言ってそのままの角度で前に持ってくるらしい。
それがどうも不思議で、新鮮で。
ずっとアデューの手を眺めていたら、〝眺めすぎだろ〟とシルクに笑われてしまった。
「はい、じゃあ、いきますよー?」
ふっと、周りがスローモーションになったように思えた。
村で過ごしてきた生活が、走馬灯のように脳内を駆け巡る。
神経全てがそれに反応して、ゆっくり、ぱちりと目を開いた。
生贄の自分が、まだ完全にいないわけではない。
私が姫だと名乗っても、どれだけ姫にふさわしい生活があっても。
……彼らが、いても。
どこからかひょっこりと顔を出して、また、私の心を曇らせる〝生贄〟は、いる。
__だけど、姫がいないわけじゃないんだ。
「せーの……」
生贄の自分が、少しでも見えなくなれば……いなくなれば、いいな。
そんな願いを込めて、
『アデュー‼︎』
私は、生贄の殻を破る行動に、一歩近づいた。