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生贄のプリンセス【Fischer's】

第3章 ようこそ、お姫様


シルクside__


「辛かったよね」

ダホがそう言うと、彼女の顔つきはじっくりと見る間もなく変わっていった。
焦点が合わない。視線は俺の方を向いている。
それでも、どこかおかしいような__何かに気付いたような、そんな顔をしている彼女の言葉を、待つ。


俺らが出来る事は少ない。
ましてや、彼女と身分の違う俺らは 逆に彼女のプレッシャーになるだけだ。

__本当は、俺らの助けなんて求めてねえのかもな。
自虐的に、カラカラに乾いた喉だけが嗤う。
すると、まるでそこに雫が一粒__いや、二粒、三粒と垂れたような音が聞こえた。

「っ……あぁ…‼︎」

彼女は、乾いた砂漠に雨を降らしていく。
俺も、彼女も、未来を晴れにできる能力なんて持ってない。

俺らと彼女は〝フツウ〟じゃない。
だったら〝フツウ〟じゃない天気だって、俺らだって、彼女だって、世界だって。
__おかしくはねえだろ?


「言ったろ。
〝お前を助けてくれる場所〟だって」


俺らは〝フツウ〟を知らない。
だけど〝フツウ〟を知ろうとはしない。
今があるのなら、今を生きていたいから。

彼女の涙を溜めた瞳は、ジッと、俺を見据えてくる。
彼女の瞳から、大きな一粒の涙が流れた。
その姿は まるで涙を流すプリンセスのようで。

__あぁ、そうか。こいつは、俺らの姫なんだ。

やっと、やっと、彼女の存在がパチンと俺らの中にハマる。
ずっと俺らが求めていたもの。
それはきっと、彼女の存在だったんだ。
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