第8章 運命論者の悲しみ
喫茶店からエレベーターに乗り、なまえは探偵社に向かった。
『只今戻りました』
「おいなまえ!!貴様何処に行ってた!?お前と太宰がいない間に大変だったんだぞ!!」
扉を開けば突如掛かった国木田の声に、なまえが事務所を見渡せば、社内は大荒れだ。
『ありゃりゃ…ポートマフィア?(広津さんあたりでも来たのかな)』
「嗚呼…たくっ…」
『修理代どの位かかるだろうねぇ国ちゃん』
「それを云うな!」
探偵社にとって”最悪の状況”とは、こういうことだったのか・・・と敦は妙に納得すると同時に、特殊部隊並みのポートマフィアの武闘派集団”黒蜥蜴”の奇襲をいとも簡単に片付けてしまった探偵社に敦は驚愕していた。
「………(ポートマフィアなんかよりこの会社の方がよっぽど物騒だ…)」
「いつものことながら襲撃は本当勘弁して欲しいな…ったく」
「(いつものことなの…?)」
「よりによっていつもなまえと太宰がおらんときに…全く悪運の強い奴らめ」
『私は逆に居合わせたい気持ちでいっぱいだよー、国ちゃん』
「何を呑気な事を言っとる!!早くお前も片付け手伝え!!小僧、お前もだ!!」
――”自分のできることを考えておけ”
国木田に言われた言葉を敦は思い出す。
「は、はいっ!!」
敦の真っ直ぐな返事が、探偵社に力強く響いた。