第6章 或る爆弾
先日の事件である”人食い虎 ”の正体は、中島敦と言う少年だという結論に至った。
そして現在・・・なまえと国木田は、太宰を探しに街を歩いている。
『本当にうまくいくのかしら、入社試験。当の敦君の答えさえも訊いていないでしょうに。』
「太宰の考えた事だ!後の事は俺は知らん!」
とりあえず太宰を探す、と言い国木田の眉間には深い皺が寄る。
すると遠目に、ぼさぼさの蓬髪、砂色の長外套(コート)、首には白い包帯・・・顔には内面の読めないにこにことした笑みを浮かべた男、即ち太宰治の姿を捉え、その隣では困ったように眉根を寄せた中島敦が歩いている。
「任せ給え、我が名は太宰。社の信頼と民草の崇敬を一身に浴す男……」
「ここに居ったかァ!」
太宰の言葉を遮り、国木田が咄嗟に叫ぶ。
「この包帯無駄遣い装置!」
「…国木田君!今の呼称はどうかと思う…でもまぁいい!ここでなまえちゃんに会えたからね、本望さ!」
上に手を挙げ叫ぶ太宰。
「この非常事態に何をとろとろ歩いて居るのだ!速く来い!」
「朝から元気だなぁ~そんなに急いでどうしたんだい?」
「爆弾魔が人質を連れて探偵社に立て篭ったんだ」
「爆弾魔!?!?」
国木田の言葉に、敦は大きな瞳を更に見開いた。