第2章 戻れない場所
「太宰君。なまえさん。織田作さん。いつか時代が変わって、特務課もマフィアも違う体質になり、我々がもっと自由な立場になったら――また此処で」
「それ以上云うな安吾」
織田は云った。
「云うな」
安吾は傷ついたように首を振った。それからゆっくりとバー・スツールから立ち上がり、自分の足音に耳を澄ますように下を向いたまま、ゆっくりと店を出て行った。
安吾がいた席のテーブルには、飲み終わった杯の他に、何かが置かれていた。
織田はそれを拾って、太宰となまえに見せた。
ほんの数日前、この店で撮影した四人の写真だった。
写真の中の四人はどれも、楽しそうに笑っていた。