第7章 『春日狂想』
翌日の日もすっかり暮れた頃、泰子と中也は割り出した機密機関の本部へ来ていた。
都心から離れた所に在る本部の入口では、警備員が数人見張っていた。
「勿論、正面突破...だよなァ」
「当たり前」
まるでアポを取ってあるかのように二人は入口へ歩み寄る。
止めに入る警備員だったが、声をあげる前に喉元を掻っ切られ絶命していた。
「手前、鈍ってんじゃ無ェか!寝過ぎなんだよ!」
「五月蝿い」
警報が鳴るのも気にせず二人は中へと歩を進めた。
押し寄せる警備員も一人残らず殺害していく。
あっという間に、最奥の扉の前へと辿り着いた。
「呆気無いね」
「終わってから言え」
「終わった様な物でしょう」
固く閉ざされた扉は、中也によりいとも簡単に破られる。
中に居た数人の政府関係者は怯えた声をあげるが、其処に逃げ場は無い。
「御機嫌よう、塵屑以下の皆様」
「貴様等マフィア如きが政府に楯突くなど...っ!」
「寝言は寝て言って」
パン、という泰子の放った銃の銃声と共に一人が崩れ落ちた。
その横では中也によって殺害された数人の屍が転がった。
残ったのは機密機関の最高責任者、只一人だ。
「貴方達の実験とやらの成果を見せてあげているんだ。研究に携わる物をとして至上の喜びじゃないか」
「も、もうこの様な実験はしないと誓う!だから、命だけは...っ!ゆ、許してくれっ!」
「どうやら先程の言葉が通じなかった様だね」
「頼む...、殺さないでくれ...」
「──だそうだよ、広津さん」
泰子がそう言うと責任者の男の後ろのモニターに、広津の姿が映し出された。
広津の他には、芥川とその他の黒蜥蜴の面々、そして捕えられた男の妻と子供の姿も在った。