• テキストサイズ

生い立ちの歌《文スト》

第2章 『頑是ない歌』





「恨むなら己の行動を恨む事ね」



乾いた銃声が三発。男はもう動かない。



「さ、終わったし帰ろうか」

「後始末しなきゃなんねぇだろうが!」

「やだな中也。そんなの泰子が既に終わらせ...」

「真逆っおい泰子!待て!」



太宰の言葉を遮り中也が泰子、と呼ばれた女を制止する。が、時既に遅し。ドーンという爆音と共に先程絶命した男が立て篭もっていた倉庫は炎に包まれた。



「手前また俺の車を...」

「丁度良い所にあったから」



あっけらかんと言い放つ泰子に中也はわなわなと怒りで震える。
長谷川泰子。彼女が保持する異能力「修羅街挽歌」は引力を操る能力である。
男が敷石を噛まされた時も、倉庫が爆発したのも彼女が中也の車を倉庫まで能力でぶつけたからである。



「欺く為の小麦粉と薬がたーくさん保管された倉庫を使用するなんて、爆発させて下さいって言っているようなものだよねぇ」



車をぶつけられたことにより倉庫内の小麦粉は大気中に舞い、そのまま爆発。
彼女は粉塵爆発を利用し後始末を迅速に終えた。



「もしもし首領。後始末終了しました。───はい。了解です」



首領への報告を終えると携帯電話を仕舞う。
電話が終わる迄は待っていた中也であったが、怒りは未だ収まらないようであった。



「手前らどうやって帰る心算だ。行きも俺の車で来ただろうが」

「中也が迎えを呼べば良い」

「こンの青鯖女...っ!!!」

「どうせ中也は直ぐには呼ばないと思って私が呼んでおいたよ」



太宰がにっこりと微笑むと、丁度前方から一台の車が向かってくる。
車は三人に近付くとヘッドライトを消し、停車した。
運転席の眼鏡をかけた人物は早く乗れ、と言うようにジェスチャーを送る。



「私広津さんの隣り」

「私は中也の隣りなんて嫌だ」

「おぉそうかよ。じゃあ手前は歩いて帰るんだな?」

「中也はトランクでいいじゃないか」



一番乗りで助手席を確保する泰子と、未だに言い争って車に乗らない中也と太宰。
この三人はポートマフィアの若手だが全員が強力な異能力を持っていた。
全員歳も同じで、喧嘩こそ日常茶飯事であるが息は合っている。何より三人ともこの関係を心の何処かで心地好いと思っていた。


/ 59ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp