第6章 『骨』
「中也!何処へ行く心算だ!」
「決まってんだろ!彼奴を連れ戻す!」
「莫迦か君は!泰子が何処へ連れて行かれたかもわからないだろう!?」
「じゃあ放っとけって言うのか!?」
中也と太宰の口論を制止したのは、太宰のポケットにある携帯だった。
画面に表示された着信相手を見た途端、太宰は表情を変える。
「安吾、泰子が連れ去られた」
「矢張り...。彼女は機密機関による実験の被験者。そして唯一の成功者だ」
「なんだって...」
「急げ太宰くん!場所は直ぐにメールで送る!」
太宰は送られてきた地図を確認すると、走り出した。
「っおい!泰子は何処だ!」
「中也も着いて来ればいい!」
取り乱した様子の太宰に中也は一瞬足を止めるが、直ぐに太宰の後を追った。
「乗れ」
中也が自分の車を指差すと、太宰は直ぐ様助手席へ乗り込む。
中也も運転席へ乗り込むと、車を猛スピードで発進させた。
「どういう事か説明しろ」
「泰子は政府の機密機関によって行われていた実験の被験者で、唯一の成功者だと安吾から連絡があった」
「なんだと?」
「恐らく泰子を使って実験を進めたいんだろう。──急げ、中也」
「言われなくても急ぐっつうの...!」
太宰に示された場所へと中也は車を走らせた。