第6章 『骨』
放たれた筈の鉄線銃は泰子を仕留める事は無かった。
それどころか物陰に潜んでいた筈の国木田の体は、彼女の前へ引きずり出されていた。
「な、んだと...っ!?」
「やめろ国木田君!君の敵う相手じゃない!」
直ぐに反撃態勢をとる国木田だったが、奥の部屋から飛び出して来た太宰によって攻撃は阻止される。
「賢明ね、太宰」
泰子はそう呟くとポケットに忍ばせていた銃から手を離す。
体術は中也には及ばないにしても、ポートマフィアの幹部にまで登り詰める程の実力は持ち合わせている。
銃の扱いに関して言えば、泰子の右に出る者は居ないとまで言われていたのだ。
「ねぇ君。如何して此の場所が解ったんだい?」
太宰の後ろからハンチング帽に茶色のスーツを纏った探偵社きっての名探偵、江戸川乱歩が泰子へ問いかける。
「君達の最大の敗因はパソコンを事務所に置いていった事だよ。其れさえあれば何処だろうが割り出せる」
「へえ、凄いね」
「乱歩さん!感心してる場合ですか!?」
慌てた様子の敦だったが、乱歩も泰子も至って落ち着いた様子である。
「未だ解らないかい?敦くん。僕達は此処に誘き出されたのだよ」
「政府の目的は私達を潰し合わせる事」
「ご名答」
聞き慣れぬ声が聞こえたかと思いきや、その瞬間泰子の姿はその場から消えていた。
「泰子っ!?」
中也が辺りを見渡すが、何処にも泰子の姿は無い。
「政府の異能力者か...っ!糞が...!!」
「相手の異能力は自分や触れた相手を何処かへ移動させる能力、か...?態々此処へ誘き出したという事は、移動出来る距離も関わっているという事、か」
乱歩が顎に手をやりながら呟いた。