第5章 『 汚れっちまった悲しみに』
「これしか無かった」
「だろうな」
「ねぇ、中也。太宰は何を考えてると思う?」
「んなもん俺が知るかよ」
「元相棒でしょう」
中也が元相棒とは言え、太宰が何を考えているか分からない事は泰子も良く知っていた。
どんどん空いていくボトルに比例して、二人も完全に酔っていた。
机にぐでんと突っ伏していた泰子は横になろうと立ち上がると、寝室へ向かう。
「中也はソファね」
「ああ?俺がそんな所で寝ると思ってんかァ?」
中也も立ち上がると泰子の腕を掴んで寝室へ向かう。
この状況で中也が何をする心算かは彼女も分かっていた。
その上で拒む事はせず大人しく中也に着いて行った。
ベッドに着く前に中也は泰子の口を塞ぐ。
「っ、今日は随分と性急ね」
「五月蝿ェ」
もう一度口を塞げば酒によって熱くなった舌同士が絡まる。
息継ぎをしようと泰子が中也から離れようとするが、中也がそれを許さない。
後頭部を押さえつけられ更に深く口付けられると、頭がボウっとしていく。
そうしている内に中也は器用に泰子の服に手を掛け、あっという間にシャツを肌蹴させた。
「はっ...中也...」
「...ンだよ」
「私だけ脱ぐのは狡い」
「減らず口叩きやがって」
そう言いつつも自身でシャツを脱ぎ捨てると、泰子を押し倒しながら髪をかき上げ首筋へと噛み付く。
「...っ!」
前回と同様泰子の首筋にはくっきりと噛み跡が付いた。