第19章 失われていたもの
「んで?何の話をしてたんだ?」
「お前たちの代の四獣は今までとは少し違うという話をしていたところさ。」
老婆の言葉に、ソリャはぴくりと眉を動かした。彼は人と違うということにまだ恐れや嫌悪があるのかもしれない。
「それは…今までと違うのは悪いこと、なのか?」
「いや、こうやってこの国にいざこざが起きるのを見越して、こうなったんだね。自分は元凶になるって考え、いい加減にやめな。あんたの悪い癖だよ」
そう老婆に言われて、ソリャが肩を揺らす。どうやら図星らしい。
「んなっ!べ、別にそんなこと…思ってねーよ」
だんだんと尻すぼみになっていく声は、言葉よりも雄弁に語っていた。しかし、そのあと拗ねたような表情を見せるあたり、思ったことが顔に出るようになっているし、深く悩んでいる様子もないため、ソリャも少しずつ変わってきているのかもしれない。
「ねぇ。今までの四獣と違うのなら、自分が持ってる能力の情報、みんなでちゃんと共有しない?」
ムニルがそう提案する。皆の視線はムニルへと向かった。
「そうだな、お互いに能力のことをしっかりと知っておくことで、いざって時に役立つかも知れないしな。俺ももっと四獣について知りたい。」
リョンヘもそう賛同した。
確かに、今まではムニルは青龍で、水を操ることが出来るというのは知っていたが、水を口から放出したり、霧を作り出す以外に何が出来るかというのを考えるまでに至らなかった。具体的な操り方を知らなかった、ということだ。
ハヨンも、二人の話を聞くうちに自身が四獣であることを自覚できる何かを思い出すかも知れない。四獣の能力というものに、大いに興味があった。
ソリャはどう思っているのか、とハヨンがちらりと見ると、
「俺も四獣のことで知らねぇことが山ほどあるからな。俺も賛成だ」
と頷いた。