第12章 足枷
明け方に出発するため、三人は眠っている。ソリャはそれを背にしながら、自分が過ごしてきた町並みをじっと見つめ続けてきた。
やがて、日が上るために空が白んでくる。張りつめた空気を太陽の優しい光が照らし、煌めく。ソリャはずっとこの町を薄暗く、陰気だと思っていた。しかし、それだけでは無かったことに気がついた。
「ありがとう…」
ソリャはそうそっと呟いた。
町では自分を憎む者がいた。痛めつけるものもいた。それを許すことは出来ない。あの苦しみは絶対に忘れられないものだろう。
けれど、どこかで誰かが自分を気にかけていることは気づいていた。時折そっと置かれている食べ物や衣類。冬には防寒具が置かれていることもあった。
全てに優しい気持ちにはなれないが、ソリャはその気遣いに、今初めてありがたく感じた。あの気遣いがなければ、自分は死んでいてもおかしくはないからだ。
ソリャは立ち上がって町を背にする。そしてハヨン達が眠っているもとへと歩いていった。