第16章 Episode 15
「緊張した?」
「そりゃあね...」
無事顔合わせも終わり、帰る支度をしているとユキが声をかけてくれた。
「主題歌が完成したら、僕らの番組に出てよ」
「え?」
「するんでしょう?ライブ。宣伝しにおいでよ、ドラマもあるんだし。モモも喜ぶと思うよ」
「そうかな...。また社長に相談してみる」
「うん。そうして」
そうしてユキと別れを告げて、私は迎えに来てくれたお兄ちゃんの車に乗り込み、事務所へと戻った。
「さくらおかえり」
「ただいま、大和」
「今日顔合わせだったんだろ、どうだった?」
「すっごい緊張した。でも相手がユキだし、ちょっとは安心かな」
「はぁ、あの人はいっつも美味しいとこばっか持ってくよな...」
「演技については大和にも色々聞くと思うから、よろしくね」
「教えられるかはわからないけど、まぁ頼ってよ」
大和と話をしていると、他のメンバーも続々と集まってきて、みんな私のドラマ出演を祝福してくれた。
これから撮影に主題歌に忙しい日々が始まるが、私はそんな日々が楽しみでならない。
「さくら、今月末までに主題歌できそう?」
「大丈夫。台本を貰ったときに既にアイデアは浮かんで来たから!」
「なんか、いい顔になったよな」
お兄ちゃんが私の顔を見ながらそう言う。
私が忙しくなれば、お兄ちゃんも忙しくなってしまうが、そこは気にしなくていいと言ってくれた。
「色んなことが楽しみで仕方ないんだ」
「うん。わかってる。来週には本読みとリハーサルが始まるからな。ちゃんと台本覚えておくんだぞ」
「はーい」
自宅に戻り、もう何度も読み込んだ台本を手に取る。
台本を読むたびに、話に入り込んでしまう。
何度も何度もストーリーを読み込んでいると、自分でも驚くほどアイディアが浮かんできて、予定よりも早く主題歌を完成させることができた。