第2章 Episode1
「わあ!Sakuraの新曲だ!ううーん、1人で夜に聴いたら泣いちゃいそうだよー」
「ね!ほんとに綺麗な声!絶対綺麗な人なんだろうなぁ...」
新宿の大画面に映し出されたSakuraの新曲のMV。
本人は出演せず新人のアイドルや俳優等を起用した、楽曲に沿った物語。
「──綺麗な人、ねぇ。あんまりハードル上げられるのも困るなぁ...」
街に流れる自分の歌。
街の人達が賞賛してくれるのは素直に嬉しいし、それが次の曲への原動力だ。
勿論顔を出していないからこその酷評だってある。
その辺はあれだ。
好きに言わせておけばいい。
「あ、もしもし大和?今夜暇?」
『夜?空いてるけど』
「飲みに行こうー。三月も誘ってさ」
『おお、いいよ。ミツにも言っとく』
「いつもの居酒屋でいい?時間はそっちに合わせるからまたラビチャして」
『了解ー。じゃあな』
通話終了のボタンを押し、携帯を鞄に仕舞う。
新曲も出せたことだし今日は呑もう。お酒大好き。
お兄ちゃんには少し怒られるかもしれないけど、飲み過ぎなければ大丈夫だろう。
大和と三月と飲むことを楽しみに、私は駅に向かって歩き出した。