第2章 *路地裏*
「…っ!大丈夫か!?」
急いで少女の元へ駆け寄る。顔や足に無数の切り傷があり、着ている制服にも血が滲んでいる。
年は、俺と同じくらいだろうか。
急いで警察に電話を入れて、このヴィランはどうにかしてもらおう、と思い少女の方に触れた。
「…!?おい…なんだこれ……」
触れた少女の方はまるで氷のように冷たい。
よく見ると睫毛は凍り、目を開けているのも辛そうだ。
日々ヒーロー科として緊急時の対処法などを学んでいる俺だったが、こんな症状に対する対処法など習っていない。
単に一年生だから、という理由もあるのだろうが……
他人を凍らせる個性を持ったヴィランなど見たことも聞いたこともないのだ。しかも目の前にはヴィランが凍らされている。ヴィランを殺すヴィランがいたとするならば絶対にプロヒーローの耳には入っているはず。その対処法も少なからず教えてもらっているはずだ。
(とりあえずコイツを病院に……いや、プロヒーローが掴んでないヴィランの個性ならリカバリーガールの方がいいかもしれねぇな)
そんな自分会議を繰り返している最中、少女がうっすらと口を開いた。
「さむ…い……」
「……!」
何を思ったのか自分でも分からない。
先程の自分会議で一刻も早くリカバリーガールの元へ連れて行くと決定したはずだ。
だけどこの時俺は突発的に目の前の体を抱き締めていた。
今こうしなければ、消えてしまう気がしたんだ。
「大丈夫だ、俺がいる。絶対に助ける」
これでもプロヒーローを目指す雄英の生徒だ。
人一人守れなくてどうする。
「やだ……死にたくない…」
「落ち着け。俺はここにいる」
カタカタと震える手を握り締めると、少し震えが収まったような気がした。
「そうだ、そのまま少しずつ深呼吸をしろ」
少女が小さく頷いて深呼吸をすると、体の体温がゆっくりと元に戻っていった。