第6章 *雄英*
§ ユイside §
「よしっ、忘れ物は無いよね」
真新しい制服に身を包んで鏡の前に立つ。
今日は私の雄英高校初登校の日だ。
雄英への編入を告げられた夜、お父さんから電話があり、改めて雄英への編入が決まったことと初登校の日を教えてもらい、次の日には新しい制服も用意されていた。
轟くんは学校まで一緒に通うと言ってくれたけど、お手伝いさんが送ってくれるので今は大丈夫だと言っておいた。
「ユイ様、行きましょうか」
「うん」
お手伝いさんは私より13個年上で、お母さんが亡くなる少し前からずっと働いている。と言っても沢山いるわけじゃなくて2人だけ。名前はメニーさんとスウさん。
お父さんは仕事で海外を飛び回っているから殆ど家にいないし、料理が好きな私が夕ご飯を作っているからどちらかというと同居人のようなものなのだ。
母が、亡くなる直前に自分がいなくなっても寂しくならないようにと雇ってくれた。沢山遊んでくれたし、お姉ちゃんのような存在でもある。
「うん、これなら来週からでも自分で通えそう」
お手伝いさんとの思い出を思い出しながら車の窓から少し顔を出して、これから自分が通うことになる通学路を覚えた。家からそんなに遠くは無いので直ぐに覚えられる。
「ここで大丈夫。ありがとう、メニーさん」
出来るだけ目立たずに人ごみに紛れたかったので、校門から少し離れたところで車を降りて学校へと向かう。
雄英と言えど、制服姿の生徒たちは普通の高校生だった。
(それもそうか…雄英はヒーロー科だけじゃなくてサポート科も普通科もあるわけだし個性なんて登校する時は使わないもんね)
そう。この学校には普通科がある。サポート科と経営科の生徒は自ら望んでその学科を受けていることが多いと聞くが、普通科は『ヒーロー科に行きたかったけど行けなかった人』が多い。
編入なんてしたら絶対に誰かしら突っかかって来る人はいるだろう。だからこそその話題以外であまり注目を集めたくはない。
普通科の生徒とは穏便に……そう心に留めながら私は職員室へと向かった。