第14章 *自尊心と自嘲*
「怒ってねぇのか?」
「何か怒られるような事したの?」
「何も…聞いてねぇのか?」
「もうっ。質問ばっかり!言いたいことがあるなら自分の口で言ってください」
そこで気付いた。あいつらは俺に気を使ってユイには何も話してないんじゃないかと。
「…お前を置いて爆豪を助けに行った」
「オールマイトが引退に追い込まれるくらい酷かったあの場に行ったの?」
「…行った」
言い訳もせず頷く俺はまるで叱られる子供の様。
それを言ってもユイは特に動じる事もなく話を続ける。
「危険だって分かってたでしょ?何で行ったの」
「俺達にする事は無いって分かってても助けたかった。止められても体が動いてた」
「はぁ…」
大きなため息を一つつくユイ。
俺に呆れたか?
「なら良いよ。爆豪くんも助けて無事に帰って来たなら良い」
「おこら…ねぇのか」
てっきり怒鳴られるかとも思っていた。確実に不機嫌にはなるだろうと。
だが、ユイはそれをあっさり受け入れる。
コイツはこんなに俺を振り回す奴だっただろうか。
「だって沢山悩んだんでしょ?顔に書いてあるよ」
あぁ。ちげぇな。
コイツをは俺を振り回してんじゃねぇ、俺の事を誰よりも分かってるだけだ。
「それにね、焦凍が悩んでる時隣に居てあげらなかったのは私だよ。だから焦凍を責める事は出来ない」
「ユイ……」
「でもダメな事はダメだからね?後でちゃんと止めてくれた皆に謝って」
思わずその体を抱き締めると、華奢な体がより一層細くなっていたのが分かった。
「自分を責めるのは止めなよ。もう一回いうから良く聞いててね?」
「私を助けてくれてありがとう、焦凍」
小さな頭を腕に抱えると、肩に生暖かい何かが触れる。
それが涙だとすぐに気づいたけれど、俺は知らないふりをした。
そして、どちらからともなく唇が触れ合う。
久しぶりに感じたユイの体温は俺の中の悩みを全て包み込んでくれた。