第14章 *自尊心と自嘲*
ヴィラン襲撃事件の次の日、メニーとスウはユイが病院に運ばれた事を聞いて急いで病院へと向かった。
そこで突き付けられた現実はあまりにも悲惨で、ユイを信じるしかないもの。
「毒ガスにより意識不明の重体。正直に言いますと誰よりも危ない状態です。命も…危ないかと」
世界が真っ黒になった。
いつも一緒にいたユイ様が。
誰よりも優しく使用人である私達にも対等に接してくれて小さい頃から沢山遊んだユイ様が。
「毒ガスを含んだ生徒は他にもいますがじきに目覚めるでしょう。ですがユイさんはそうではない」
(ここで感情敵になってはいけない。理由を聞かないと)
お父様は仕事で来られなかった為、2人はその報告を任されていた。
今にも泣き出したい気持ちを抑えて冷静に振る舞う。
「個性の……暴走によるものですか」
「個性の暴走はその場で収まったと聞いています。それについての後遺症の心配はありません」
「では、何が……」
「個性の暴走により神経が麻痺していて毒ガスが体に蔓延していることに気付かなかったのです。その為、かなり多くの毒ガスを吸い込んでしまった…戻ってこられるかは彼女次第です」
医者は曖昧な事しか言えなくてすみませんと謝った。
だがそれはこの人のせいではない。全てヴィランのせい。
泣いてはいけない。泣いてはいけないと自分に言い聞かせた。
「私達も全力を尽くします。ユイさんはICUの中にいます。会いに行きますか?」
「……はい」
2人は顔を見合わせて静かに誓った。
ユイ様を……信じようと。
通された部屋は大きな個室。
直接ベットの傍に行くことは許されず、身内であっても今はガラス越しにしか面会は出来ないという。
案内された部屋の前には先客がいた。
静かにガラスに手を当ててユイ様を見つめる1人の男の子が。
「貴方…もしかして…………」