第14章 *自尊心と自嘲*
「個性の暴走は収まったと思います」
ユイちゃんを抱きかかえた轟はそのまま相澤先生の元へと向かう。
「悪いな、助かった。今救急車が到着したから月城に付き添ってそのまま病院でお前も検査を受けろ。話は通してある」
「はい」
何だよ…それ。
何でお前がユイちゃんの名前を呼ぶ。
何で俺にユイちゃんが助けられなかったんだ。
ユイちゃんを救急車の担架に降ろす轟の顔は完全に彼氏の顔…嫌でも分かんだろ。そんなの。
お互い名前で呼び合っているのを目の前で見せつけられて、お前に可能性は無いと突き付けられた。
(馬鹿みてぇだな…俺)
好きだと自覚して
沢山喋って
笑顔だって最初に比べれば沢山見るようになった
俺、ユイちゃんの事知れてるんだなって思った。
知ったつもりになっていただけだ。
ユイちゃんが俺に見せてくれたものは全部他の奴らだって知ってたこと。
俺だけが特別って訳じゃなかった。
(そりゃそうだよな。だってもう特別枠は埋まってたんだからよ)
だってユイちゃんの個性の暴走って何か知らないだろ。
勿論対処法だって知らない。
俺はユイちゃんのほんの少ししか知らなかった。
轟はきっと知っている…俺は知らない。
今思えば色んな女の子に可愛いと言ってきたが本気で好きになったのは初めてかもしれない。
(短かったな~俺の初恋…)
乾いた笑みは自分への自潮。
俺は林間合宿でヴィランに襲われた日、生まれて初めて失恋をした。