第11章 *林間合宿*
森の中を少し歩いたところで何人かの人影を見つけた。
(あれは…麗日と蛙吹?)
それと見慣れない奴が一人麗日に覆いかぶさっている。
「障子ちゃん!皆!」
蛙吹が俺たちに気付き声を上げると、そいつは麗日から飛び退いて草むらの中に入った。その手にはナイフが握られている。
(こっちにもヴィランか。一体何人いんだ)
セーラー服に短いスカート、そして髪を2つに纏めた金髪の女は傍から見ればヴィランには見えねぇ。
街中ですれ違ってもごく普通の高校生だと思うだろう。
「人が増えたので殺されるのは嫌だから…ばいばい」
そしてそそくさと森の中へ消えていった。
(とりあえず2人と合流出来たのはデケぇ。動けないくらいの外傷も無さそうだ。これならより安全になる)
「僕ら今、かっちゃんの護衛をしつつ施設に向かってるんだ!」
それを聞いた蛙吹と麗日は首を横に傾け眉を八の字に曲げる。
「その爆豪ちゃんはどこにいるの?」
(何言ってんだ。爆豪はそこにいるだろ)
後ろを振り向いて絶句した。
後ろにはただただ続く道と森と暗闇だけ。
うっすらと指す月の光は誰を照らすでもなくアスファルトの中に吸い込まれる。
そう、そこには誰も居なかった。
俺の後ろに居たはずの爆豪。確かに居た筈。
油断はしてねぇ。攫われたなら直ぐに気付いたはずだ。
どのタイミングで?いつから居なかった?
もしヴィランが何かしなたら一番近くにいた俺が気付くべきじゃなかったのか?
自分に問いかけても俺は答えられない。
だが、質問の答えは帰ってきたのだ。
答えたのは勿論俺じゃない……緑谷でもない。
その場にいる全員が爆豪を探して視線をさまよわせている。
「彼なら…俺のマジックで貰っちゃったよ」
答えたのは初めて聞いた声。木の枝の上で、笑みを浮かべたマスクを被って佇む道化師だった。