第11章 *林間合宿*
§ ユイside §
「ユイ~!これすっごく美味しいよ!食べてみて!」
「あっ…本当だ!美味しい…!」
後ろの席に座る三奈ちゃんから貰ったお菓子を受け取って口の中に入れると、甘い香りが広がる。
今日から林間合宿。今はバスの中だ。
浮かれているのはどうやら私だけじゃないらしく、皆先生の話も聞かずバスの中は喧騒に包まれていた。
(勿論合宿だから着いたらちゃんとするけどバスの中くらい良いよね)
正直焦凍との一週間の疲れもまだ取れていない。
まだ時間はあるし少しだけ寝ておこうかな、なんて思った時、急にバスが止まって私たちは外に出された。
しかもそこには何もなく、目の前にただただ森が広がっているだけ。
クラスの皆も騒然とする中、急に人影が現れた。
「煌めく眼でロックオン!キュートにキャットにスティンガー!ワイルドワイルドプッシーキャッツ!」
「今回お世話になるプロヒーロー、プッシーキャッツの皆さんだ」
緑が広がる所で、赤と水色の服を纏った二人の女性を相澤先生が紹介する。
そのそばには小さな男の子も一人。
赤い服を着たマンダレイさんが私有地と言って指さしたのはかなり遠く。少なくとも、直ぐに行ける距離では無さそうだ。
最初は意味が分からなかったが、少しずつ言いたい事が分かってきた気がした。
「バス…戻ろっか…な?早く…」
「そうだな!そうすっか…!」
瀬呂くんの言葉に上鳴くんが同意し、甲田くん、三奈ちゃんも頭を縦に振る。
「今は午前9時30分。早ければ…12時前後かしら」
クラス一斉にバスへと走るが、12時半までかかったらお昼抜き、と言う言葉と共に、バスの前にピクシーボブが立ち塞がる。
そして、私たちは爆発のようなものに吹き飛ばされた。
恐らくピクシーボブの個性だろう。
「おーい!私有地につき個性の使用は自由だよ!今から3時間、自分の足で施設までおいでませ!……この魔獣の森を抜けて!」
「嘘……」
このだだっ広い森を抜けて自分で施設まで行けと言うのか。
しかも制限時間付き。
やっぱり雄英の合宿はただの合宿じゃないようだ。
(てか今魔獣の森って……)
考えなくても良かった。
魔獣は直ぐに森の影から姿を現したから。