第24章 林間合宿──私情
目の前の流衣は今、悔しそうに悔しそうに、歯を食いしばっている。
普段の冷静でしかし勝気な彼女の姿はどこにもない。
戦えるのに、戦えない──
そんな矛盾した立場にいることを、ひどく悔いているように見えた。
優しく撫でると、あのね、と流衣が小さく呟いた。
まだ他の生徒たちに聞かせないようとの理性は、残っているのだろう。
USJ事件のときとはだいぶ違った様子に、幾許かの安心をブラドは覚えた。
「…もう少しだったの。
あと、少しすれば………国から、許可が下りたのに」
それなのに、なんで今なの。
流衣は顔を歪めている。
綺麗な顔が台無しであったが、とてもでないが言える雰囲気でもない。
よく見ると、拳が震えていた。
それは、今にでも飛び出して行きたい気持ちを必死に抑える、僅かな理性のように思えて────
ブラドは、もう何も言うことはできなかった。
お前は悪くない、その言葉すらも飲み込んで。