第12章 灯火に陽炎
大勢の人が出入りする一日になる。
なるべく一緒にいようとは思ったが、やはり時間を取るのは難しい。
他の部員が気を遣って早めに交代してくれた。
連絡を取ってなんとか会ったが、人の少ない展示コーナーをうろうろするくらいしか出来なかった。
体育館裏の休憩スペースなら人も少なく、ベンチに座れる。
周りながら買っておいた食べ物を広げ、隣に座った。
「ご、ごめんね…最後だから、ゆっくり、見たかったよね……?」
「いや、一緒に回れればいい」
「…ありがとう」
にこっと笑うと、はパン一つに手を付けた。
「色んな事、任されて、楽しかったの。
今まで、あんまり人と関わってこなかったから……」
「そうか」
「どんな風になったかな……?
ちょっと、気になるね……」
「なんだ、見てないのか」
は申し訳なさそうな顔をする。
「怖いから……」
身なりの通りのことを言うのが少し面白く感じる。
小心者の彼女らしい言葉だ。
「一緒に行く」
「…あ、でも、あんまり興味ない、よね…?
無理しなくても……」
「してない。
俺が一緒に行きたいだけだ」
遠慮がちな言葉を遮り、いつものように自分の考えであることを強く主張した。
彼女はやっと納得してくれたのか、一度だけ頷いてくれる。