第2章 ふたりの距離
「!」
真島が神田の腕をひらりと交わし振り返ると、
常に持ち歩いているドスを目に見えない速さで抜いて、
その鋭い刃の先端を一瞬で神田の喉仏に当てた。
その素早い動きに神田は瞬きする暇もないほど茫然としている。
「口、クサいねん自分。二度と俺に話しかけんな。次は命無いで」
真島は至近距離で神田に睨みを効かせる。
その目は冗談が通じないほど鋭く、神田は思わず冷や汗をかいた。
「何してるんです?2人共」
その時、少し離れた場所から神田と真島に声をかけたのは峯だった。
「兄さん、こんな場所で血祭りはやめてくださいよ。やるなら外でお願いします」
「こない豚切っても、何の楽しみも無いわ」
「なっなんやねん!好き勝手に喋りよって!やんのかコラァ!」
無表情で話す峯に真島がため息混じりでドスを下ろし、
再び胸元にしまいながら神田から離れた。
その2人のやり取りに相変わらず空気が読めない神田が火を吹いた。
「……っ!」
峯と真島の冷たい視線が神田に向けられる。
まるで汚いゴミを見るように感情すら篭っていない。
吹いた火が一気消沈した神田をその場に残し、
峯と真島は幹部室へ歩き始めた。