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真昼の月【龍が如く×真島吾朗】

第1章 真島という男




真島はその様子をじっと眺めている。


「男んとこに帰るんか?」

「真島さんが思ってるような人じゃないですよ」

「じゃ、誰やねん」

「……」

真島のストレートな一言に雅美は俯いて黙ってしまった。

その沈黙と表情に真島の心は痛いほど締め付けられ、
このまま見知らぬ相手に雅美を渡したくないと強く思った。

「行かせへん」

真島は雅美に近寄り強く腕を引っ張ると、再び雅美を自分の腕の中に閉じ込めていた。

「真島さん」

「――言うたやん、帰したないって。何で知らない男のところにみすみす雅美ちゃんを帰さないとあかんの。俺は嫌や」

目を閉じると真島の頭の中で知らない人間が雅美に手を伸ばす。

そして強引に奪い去ってしまう。

たとえ明日、明後日と再び会えたとしても、今この瞬間は真島の中で特別な時間だと思えて仕方ないのに。


「……ごめんなさい」


だが雅美は俯いたまま真島の胸元に手を突き出して、半ば強引に抱きしめる腕を解くと、
バックを手にとってそのまま小走りで部屋を出て行ってしまった。

……数分後、玄関の開け閉めする音が真島の耳に入ってくる。


心に残ったもどかしい思い。


神室町の眩しい夜景の光が暗い室内を明るく照らすが、
真島の目には何も見えてこない。


見知らぬ相手に雅美が取られた事よりも、
胸元についた涙の意味が知りたかった。




コツコツと足音を立てながら天下一通りを歩く雅美。

周りの人々は楽しそうに笑っているのに、
雅美だけは神妙な面持ちだ。


大きな国道沿いに出ると、一台のセダンがハザードを出して止まっていた。

雅美はその車を見るなり、小さく息をはいた。

そして車に近づくと助手席側の窓がゆっくりと下がり、
お疲れ様と車内から聞こえてきた。


夢が終わる。


一時の幸せが泡のように。


雅美は無表情のまま車に乗り込むと、車は白い煙をマフラーから吐き出しゆっくりと走り出す。

助手席のサイドミラーから見える神室町が、どんどん遠ざかっていく……。

雅美は後ろ髪引かれる思いでミラーから目を外し、叔父に見えないように溜まった涙を飲んだ。

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