第1章 真島という男
それは今まで感じた事の無い感情で、
特別雅美に関しては強い独占欲を抱いていた。
もっとこうしたいとかああしたいとか、勝手な想像が次々膨らんでいく。
それは真島自身が表舞台の人間ではない事を忘れてしまうぐらいだった。
こうして話しているだけで在り来りな日々がこんなにも華やかに変わってしまう。
今まで数え切れないほどの女性と話したり関係を持った真島でも、経験した事のない感覚だったのだ。
だからこそ雅美に強く惹かれた。
神室町に全く染められていない心と、汚れを知らない純粋な感情。
自分とは真逆の性格と気持ちは真島を強く引き付けて離さないのだ。
「また顔赤くなってきてる、大丈夫ですか?」
真島の気持ちなどつゆしらず、雅美が真島の顔を至近距離で覗き込んできた。
その無防備過ぎる態度に、真島の理性が一瞬飛びそうになったが必死にブレーキをかける。
「そっそうやな!また体熱くなってきたわ!」
真島は慌てて雅美から顔を反らした。
自分のこんな恥ずかしい姿をまじかで見られるなんてまず有り得ない。
いや、
こんなに近づいて真島と話す恐いもの知らずの人間など神室町にいるはずないが。
「じゃ……、私そろそろ帰りますね。これ以上無理もさせたくないし」
雅美はその場から立ち上がって真島を見下ろしながら言った。
「――あっ、そんな意味で言うたんとちゃうねん!」
「わかってますって」
部屋を出ようとする雅美に真島は慌ててベッドから降りて、声を上げ引き止める。
そのあわてふためく口ぶりに、雅美は驚く様子も見せずに笑いながら振り返った。
「その……、ほんまに帰るんか……?」
思わず出てしまった真島の一言は雅美の顔を一瞬で真っ赤にさせる。
「もう少し、側にいてくれへんか?」
真島はそのまま雅美に近づきすぐ目の前に立った。