第1章 104期生と兵士長
「で、その名前さんって方はどんな女性だったんですか?」
同じ女性として、興味のあるらしいサシャ。
答える気のなさそうなリヴァイに代わって、ハンジがうーんと首を捻る。
「そうだねえ、リヴァイより強いのは確かなんだけど、そう見えないんだよね。想像ではゴリゴリの女の人だろ?」
「はい。……あっいえ、すみません」
即肯定のコニーがリヴァイに睨まれ、またも皆に頭を叩かれている。
「それがねえ、さっきも言った通り、リヴァイと歳は離れていて…笑顔の素敵な子だよ。子供達や町の人からも好かれてる」
「へえ…だから憲兵にいったんすか?」
と、ジャン。
しかしその言葉に、少し顔を曇らせたハンジが首を振った。
「いいや、壁外調査で重傷を負ったのさ。…いつ死んでも、おかしくなかった」
「え…でも、兵長より強いって」
「俺を庇ったからだ。俺のせいで、死にかけた」
リヴァイの眉間にはシワが寄っているが、その表情は辛そうで、触れてはいけない話題だったかと後悔した。
「俺が弱かったから…あんな小せぇ体で、俺を守るためにあいつは…」
「おっとリヴァイ!懺悔はそこまでだ。名前が嫌がる事だろう?それは」
「…あぁ、そうだったな」
ハンジがぱっと明るく笑う。
「ま、そんなこんなで今は憲兵にいる彼女のことを、リヴァイは大好きな訳だよ。名前はモテるからねー、さっきリヴァイが彼女を見たのか気にしたのは、男の醜い嫉妬だよー」
「…殺すぞ」
「いいじゃないか。ほんとのことだろ?まったく、名前を見る男全員を殺そうとするんだから」
「…」
「でもさ!彼女に稽古をつけてもらえる訳だし、色々聞いてみるといいよ。リヴァイの恥ずかしいことも聞けるよきっと!」
そう言うハンジはとても嬉しそうだ。
「あー、私も早く名前に会いたいなー。暫く会ってないもんなあ、どっかの誰かさんとは違って」
「…何が言いたい」
「別にー?忙しい名前の貴重な空き時間は、ぜーんぶ誰かが取っちゃうからさー。羨ましい限りだよ」
「……」
それでも譲気はないと言った顔だ。
「ま、とにかくさあリヴァイ、話をつけてみてよ。稽古の。私も参加したいしさー」
「てめぇはダメだ」
こうして、104期生の特訓が始まるのだった。