第1章 クリスマス(鰤市)
ひたりと琢磨が足を止めた。
「琢磨?」
一護の呼びかけに応えず、ため息をひとつつく。
「昔さ・・・尸魂界にいた頃・・・」
あっちにはクリスマスなんて風習なくてさ。
ただ冬があって、仕事サボって雪遊びしてさ・・・隊長格や平とか関係なくみぃ~んな巻き込んで!
「楽しかったけど・・・楽しかったんだけど・・・」
なんでか、何か足りなかったんだよ。
「今みたいに充実した気分?ってなかったんだよね」
少し寂しげに微笑む琢磨に、一護はその横顔を見つめることしかできない。
琢磨は死神時代、“尸魂界最強の死神”として常に周りから一線引かれていた。
どんなに仲良くなったと言えども、決してその一線は越えられることはなかったのだ。
「だからさ、俺・・・」
今すっげぇ幸せ!!!
大声でそう叫んだかと思えば、次の瞬間には一護に抱きついていた。
「おっおいぃ!?」
焦る一護に、琢磨はそれはそれは輝かしい笑顔をみせた。
「一護、だぁ~い好き!!!!」
その笑顔の中、琢磨の目にはキラリと光るものがあった。
おわる