第2章 お家。
【桜凪side】
家に着くまでの間、帰り道の途中で目にした、私のわからない物をいくつか教えてもらいながら、並んで歩いた。
私が最初にいた場所は、"公園"という場所らしい。子供たちが遊ぶ広場、たまに大人が一息つく場所...。ようは、いこいの広場って所かな?と教えてくれた。
そんな感じの広場は、記憶にあった。それが公園だったかは覚えていないけど...。
あと、さっき大和さんが使っていた板みたいな物は"スマートフォン"といって、連絡をとる道具らしい。みんなは名前を縮めて"スマホ"と言っているって教えてくれた。...手紙がすっごい便利になった感じかな?
他にも、車、自転車、学校...。
こんなにもわからない物が多いと、いろいろ不便すぎるなぁ...。早く、思い出せると良いんだけど...。
「...さぁて、着いたぞ。」
『ずいぶん...大きいお家なのね。もしかして、お金持ち?』
「...なら、嬉しいんだけどな。家っつーか、寮なんだ。みんなで共同生活してんの。」
大和さんが玄関の扉を開けると、とても美味しそうな匂いが届いた。時間的に夜ご飯か...。そういえば、まだ、何も食べてないなぁ。
「ただいまー」
大和さんがそう言うと、バタバタと数人分の足音が聞こえてきた。
「おかえりなさい!大和さん!」
「おかえり!ヤマさん!連れてきたの、どんな奴?」
「環くん!いきなり聞いたら失礼だよ!...おかえりなさい、大和さん。」
バタバタと2人、子犬みたいに人懐っこそうでパタパタしっぽが見えそうな男の子と、高身長でガッチリした体のこちらも興味津々な目をしている大型犬みたいな男の子、その後ろから遅れて、優しそうな雰囲気満開の男性がやって来た。
私がビックリしてキョトンとしていると、大和さんが「ちゃんと説明するから部屋に入れろ」と犬男子2人をなだめつつ、優しさ満開男子に話しかけた。
「さっきは悪かったな、いきなりいろいろ頼んじまって。」
「いえ、大丈夫です。ほら、陸くんも環くんも部屋に戻るよ。大和さんたちが困っているじゃないか。」
私も、みんなのあとに続いて中に入る。その時、小さく「お邪魔します」と言うと、大和さんと優しさ満開男子は「どうぞ」と言ってくれた。