今日は何処で、どんな風に…【文豪ストレイドッグス】【R18】
第1章 事務所の倉庫で、嫉妬深く…【太宰治】
「よいしょっ…と」
重たい資料の山を、倉庫の棚に入れる作業、
かれこれ30分。
治さんと一緒にやっているとはいえ、なかなか終わらない。
だって彼、資料を抜いては読み、戻してはまた別の資料を読み、それを繰り返すものだからほぼ私に任せっきりである。
一体そんな資料を読み漁って、何が楽しいのか。
しかし彼の目は至って真剣であり、いつものあの飄々とした感じを感じさせないものだから、余計に手伝って欲しいなどと言えない状況である。しかも私は部下であり、上司に手伝いを要求するなど烏滸がましいにも程がある。
とはいえ、一応恋人同士なのだから、
少しくらい手伝ってくれても…なんて、
思わなくもない。
暫くずっとこの調子だ。
倉庫内には、紙をめくる音、本と本が擦れ合う音しかない。
すると突然、
「ねぇ蛍、これを見てくれ給えよ!」
急に嬉しそうに資料を見せてきたので、
ちらりと覗く。
その資料は、殺人事件の類に分類される資料だった。
題目は、"20歳女性 変死事件"
横浜に住んでいた男女にまつわる事件だという。
女性の浮気現場を目の当たりにした男性が、
その日のうちに女性を誘拐し、1週間監禁した後、なぶり殺したという惨たらしい事件。
愛ゆえに、こじれてしまったのだろう。
こんなものを見せてくる治さんはやはり変態なのだろうか。
そんなことを思っていると、彼は再び口を開く。
「愛とは美しいものであると共に、時に人格まで変えてしまう恐ろしい狂気でもあるのだ、君にも分かるかい?」
「は、はぁ…」
きらきら、生き生きとした目で語る彼に圧倒されつつ、
私は再び資料整理を再開しようとする。
しかしその手は、彼の手によって動きを止められた。